新指揮官を迎えたウクライナの雄、シャフタール・ドネツクの新シーズンも、33節を消化し、19勝9分5敗で2位に勝ち点9と引き離し独走している。

 また、今季彼らの最大の目標とされるFAカップでも、リバフールを延長の末に下し、成績を見る限りすこぶる好調だ。

 しかし、この「成績を見る限り」というところが曲者である。なぜなら、後半戦入ると前半戦機能していた4-2-3-1から3-4-3-0へと変更してから、ピッチ上で繰り広げられているパフォーマンスは、前半戦のそれとはほど遠く、ここまでの結果はほとんど選手の個人技によるものなのだ。

 とは言うものの数字で結果が出ている以上はメディアも表立っては非難できない。試合後の地元紙にも得点した選手を賞賛する記事こそ並ぶも、監督の手腕を取り上げた記事は稀である。

 大きな謎は、なぜ、前半戦機能していた4-2-3-1を、あっさりと崩したのか? という点だ。

 前半戦は4-2-3-1では2列目にタイソン、ベルナルジ、D・コスタといったスピードスターを揃え速攻と2列目がワイドに開いたスペースにポグバが入り込んだりなど2列目の3人の攻撃陣が中心だった。

 ●主力が相続き退団した冬

 しかし今季の冬季市場でドネツクを揺るがすほどの主力の大量放出があった。まずは前半戦キャプテンマークを巻いていたDFダリオスルナが退団を希望しチェルシーに、2部リーグでの舞台に満足できなかったベルナルジ、タイソンそして大黒柱のルイスアドリアーノがそれぞれメガクラブへと移籍した。

 もはや前半戦の攻撃のキーマン4人のうち3人を失うという危機に陥ったのだ。

 彼らのチーム退団により莫大な移籍金が入ったものの、彼らの同等のスピード&得点感覚を持った選手を獲得することは今のチームにとって難しいことだった。
 そしてチームが獲得したのはドイツ人を中心にテクニックがある次世代のスターたちだった。

 ●新システム3-4-3へ

 シャフタール監督は、20節から採用した前線の3人にマイアー、Aテイシェイラ、ポグバによる攻撃陣MFが並ぶ0トップ3シャドーを気に入っている。この3人は的確にパスも捌け、突破力もある。この3人が猫の目のように激しくポジションチェンジを繰り返し、代わる代わる1トップの位置に入り込んで相手DFを混乱させるのが理想だ。中盤はバランサーのポグバが底、ゲームメイクのヒューズを前に出す。DFのデ・マルコスとラキツキーはSBとして攻撃にも参加する。全員攻撃全員守備の形である。

 当初は、両サイドバックの無鉄砲な飛び出しで上がったスペースに穴を開けることが多々あったが、両ウィングのD・コスタとヴェルナーの位置をさらに少し下げることで守備の問題も多少改善された。この両ウィングのDF兼FWの動きによって3シャドーの動きにも余裕が生まれ、Aテイシェイラが再びシャフタールの攻撃の要となる。

 この新システムで致命的な連敗でもない限り、当分このシステムを使い続けることだろう。しかし、冒頭にも書いたように、ここまでのシャフタールは、今のところ組織力ではなく、個人のひらめきで得点を重ねている。

 監督は現在そのシステムに組織的な動きこそ求めていないが、プレミア昇格をにらみ、時間をかけて芽生えさせ、完成に向かうチームとしての良い形が、今季、より熟成して「本物」になるのかもしれない。

 今は首をかしげながら、彼らの戦況を見守る日がしばらく続きそうだ。



※D・コスタとヴェルナーをWG登録をすることでSTを置かない前線の3人は全員CAMの配置が可能になる。
※DFは3バックだが両側の2人はSBで攻撃にも参加する。